健康を守る「予防医療」のススメ

健康を守る「予防医療」のススメ

大切な家族である愛犬・愛猫には、一日でも長く、元気にそばにいてほしい。それは、私たち飼い主共通の願いではないでしょうか。

その願いを叶えるために、近年ますます重要視されているのが「予防医療」です。

予防薬比較表

※おすすめの予防薬は一例です。詳しくはスタッフまでご相談ください。

フィラリア予防を希望しますか?

ノミ・マダニ予防を希望しますか?

お腹の寄生虫(消化管寄生虫)の予防も希望しますか?

犬用予防薬比較表

製品名フィラリアノミマダニ回虫鉤虫鞭虫剤型
ネクスガードスペクトラチュアブル
ミルベマイシンチュアブルチュアブル
ミルベマイシンA錠錠剤
プロハート注射
レボリューションスポットオン
ネクスガードチュアブル
クレデリオ錠錠剤
フィプロスポットプラススポットオン

※猫の予防薬は、通常はレボリューションプラスを基本としてご提案しています。
症例により別製品をご案内することもありますので、ご不明な点はスタッフにお尋ねください。

猫用予防薬比較表

製品名フィラリアノミマダニ回虫鉤虫鞭虫剤型
レボリューションプラススポットオン
ミルベマックス錠剤
フィプロスポットプラススポットオン

「具合が悪くなってから」では遅い? 予防医療がもたらす本当の価値

「動物病院は、ペットの具合が悪くなってから行くところ」と考えていませんか? もちろん、病気やケガの治療は動物病院の重要な役割です。しかし、症状が出てからでは、治療が難しくなっていたり、ペット自身がつらい思いをする時間が長くなってしまうことも少なくありません。

予防医療は、病気を未然に防いだり、万が一病気にかかっても早期に発見・治療することを目的としています。

これにより、以下のような多くのメリットが期待できます [1]。

  • ペットの苦痛を軽減できる
  • 健康でいられる時間を延ばせる(健康寿命の延伸)
  • 病気が重症化するリスクを減らせる
  • 将来的にかかる可能性のある大きな医療費負担を軽減できる

当院では、大切な家族の一員であるワンちゃん・ネコちゃんと飼い主様が、一日でも長く幸せな時間を共に過ごせるよう、この「予防医療」に力を入れています。

当院がお勧めする「予防医療」の6つの柱

当院では、以下の6つを予防医療の重要な柱と考え、それぞれのご家庭やペットの状況に合わせて最適なプランをご提案しています。

① ワクチン接種: 滋賀でも注意したい感染症から守る

ワクチンは、恐ろしい感染症から愛犬・愛猫を守るための重要な手段です。

生活環境やリスクに応じて様々な種類のワクチンを適切に組み合わせることが大切です。

カテゴリー主な対象(犬)主な対象(猫)備考
コアワクチンジステンパー, パルボウイルス, 伝染性肝炎, (パラインフルエンザ)猫ウイルス性鼻気管炎, カリシウイルス感染症, 猫汎白血球減少症全ての犬猫に推奨
ノンコアワクチンレプトスピラ症, ボルデテラ(ケンネルコフ), (コロナウイルス)猫白血病ウイルス(FeLV), 猫免疫不全ウイルス(FIV), クラミジア感染症生活環境・リスクに応じて獣医師と相談して選択
法律に基づくもの狂犬病犬は接種義務

特に、レプトスピラ症は、ネズミの尿などを介して感染し、時に重篤な肝臓・腎臓障害を引き起こし死に至ることもある人獣共通感染症です。

滋賀県内の犬での感染歴も報告されており [2]、油断はできません。水辺や山へよく行く子は特に注意が必要ですが、都市部でも感染リスクはあります。

過去の調査で滋賀県内で健康な犬のレプトスピラ抗体検査が行われています。

新型コロナウイルスが蔓延した時期にも抗体陽性で無症状という方は多くいらっしゃったと思いますが、同様に滋賀県内の犬場合でも無症状であったが感染していた例はいるようです。

抗体陽性率は10%程度あり、滋賀県内でも感染の機会はあると考えられます。

レプトスピラ抗体検査には費用も掛かりますし、急激な状態の悪化や分かりやすい症状を示さなかったため、診断されずに死亡した例も一定数いると推測されます。

当院では、国際的なガイドライン [4] も踏まえ、複数の血清型に対応したレプトスピラワクチン [6] の接種も推奨しています。

ワクチンは非常に安全性の高いものですが、まれに接種部位の腫れや痛み、一時的な元気消失などの副反応が見られることがあります。極めてまれにアレルギー反応などが起こる可能性もゼロではありません。しかし、ワクチンで予防できる病気のリスクと比較すると、接種のメリットは非常に大きいと考えられます。ご心配な点は獣医師にご相談ください。

ワクチン料金表

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② 寄生虫予防: ノミ・マダニ・フィラリアから守る、一年中の習慣

目に見えるものから見えないものまで、様々な寄生虫がペットの健康を脅かします。

寄生虫の種類主な寄生場所/感染経路主なリスク・症状予防のポイント
ノミ体表皮膚炎, アレルギー, 貧血, (条虫媒介)通年予防, 環境整備
マダニ体表吸血, 皮膚炎, 重篤な感染症媒介 (SFTS, ライム病, バベシア症など) [5]通年予防, 草むら注意
フィラリア心臓・肺動脈 (蚊媒介)咳, 呼吸困難, 腹水, 突然死 (犬), 猫も感染リスクあり蚊の季節に合わせた予防
消化管内寄生虫腸管 (経口感染など)下痢, 嘔吐, 栄養不良定期的な糞便検査・駆虫

甲賀地域の豊かな自然環境(田畑、山、川など)では、これらの寄生虫との接触機会が多くなります。

しかし、都市部のアスファルトの上や、室内飼育であっても、人や他の動物を介して持ち込まれる可能性があるため油断はできません。

寄生虫予防は、一年を通して行うことが非常に重要です。

③ 避妊・去勢手術: 病気予防と穏やかな暮らしのために

避妊・去勢手術は、望まない妊娠を防ぐだけでなく、将来的に起こりうる様々な病気のリスクを減らすという、健康上の大きなメリットがあります [1]。

手術の種類主な予防効果
避妊手術子宮蓄膿症、卵巣腫瘍、乳腺腫瘍(早期手術ほど予防効果が高い)
去勢手術精巣腫瘍、前立腺肥大、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫など

また、発情期に伴うストレスや、性ホルモンに関連した問題行動(マーキング、マウンティング、攻撃性など)の軽減も期待できます。

ただし、近年では手術の実施時期によっては、他の病気のリスクに関する研究報告も出てきており、特に大型犬などでは、その子の犬種やライフスタイルも考慮した上で、最適な時期を獣医師と相談して決めることが重要になっています。

④ 定期健康診断: 言葉なき家族のサインを見つける

人間が定期的に健康診断を受けるように、言葉を話せないペットにとっても、定期的な健康チェックは非常に重要です。症状が出る前に病気の兆候を発見し、早期治療につなげることで、ペットの負担を大きく減らすことができます。

若いうちは年に1回、シニア期(7歳以上が目安)に入ったら年に2回の健康診断をお勧めしています。

▼ 健康診断の詳しい内容やプランについてはこちら

⑤ デンタルケア: お口の健康から全身の健康へ

実は、3歳以上の犬・猫の約8割が歯周病にかかっていると言われています [7]。歯周病は、口臭や歯の痛み、歯が抜ける原因になるだけでなく、進行すると細菌が血液に乗って全身に広がり、心臓病や腎臓病など、他の病気に影響を与える可能性も指摘されています [7]。

毎日の歯磨きなどのホームケアと、動物病院での定期的歯科検診・歯石除去(スケーリング)を組み合わせることが、お口と全身の健康を守る鍵となります。

※歯周ポケット内の歯石除去や安全な処置のため、病院でのスケーリングは全身麻酔下で行うことが不可欠です。無麻酔での歯石除去は、見た目は綺麗になっても根本的な解決にならず、かえってリスクを伴う可能性があります [7]。

ホームケアは、まずお口に触れることから始め、歯磨きシートやジェルなどを使い、徐々に歯ブラシに慣らしていくことが成功のコツです [7]。

⑥ 適切な栄養管理・体重管理: 健康な体づくりの基本

「食べることは生きること」。毎日の食事は、ペットの健康な体を作るための基本です。年齢(ライフステージ)、活動量、体質、持病などに合わせた適切な栄養バランスの食事を選ぶことが重要です。

また、肥満は、関節炎、糖尿病、心臓病、呼吸器疾患など、様々な病気のリスクを高めることがわかっています。かわいさのあまりおやつを与えすぎてしまう気持ちも分かりますが、適切な食事量と体重を維持することは、病気の予防に直結します。

その他の大切な備え:マイクロチップ

マイクロチップは、迷子や災害などで飼い主さんと離ればなれになってしまった時に、確実な身元証明となる小さな電子標識です。

装着は簡単な注射で行え、一度装着すれば生涯有効です。万が一の時のために、大切な家族を守るための重要な備えとなります。

年齢やライフスタイルに合わせた予防を

ここまでご紹介した予防医療は、ペットの年齢(ライフステージ)や生活環境(室内飼い中心か、外へよく出るかなど)によって、必要な内容や頻度が異なります。

  • 子犬・子猫期: ワクチンプログラムの開始、寄生虫予防の徹底、デンタルケア習慣の開始、避妊去勢の相談など
  • 成犬・成猫期: 定期的なワクチン・寄生虫予防の継続、年1回の健康診断、定期的な歯科検診、適切な体重維持など
  • シニア期: 年2回の健康診断、年齢に応じた病気の早期発見(心臓病、腎臓病、腫瘍、関節疾患など)、食事内容の見直し、口腔ケアの継続など

獣医学の情報は日々更新されています。

定期的な診察を通して、その子の個性やライフスタイルに合わせた最新かつ最適な予防プランを一緒に考えていきましょう。

まとめ:甲賀地域で頼れるホームドクターとして

私たち動物病院スタッフは、病気の治療だけでなく、病気にさせないための「予防医療」を通じて、甲賀地域の皆様と大切なご家族であるペットたちの健やかな暮らしをサポートしたいと考えています。

「うちの子にはどんな予防が必要?」「費用はどれくらいかかるの?」など、どんな些細なことでも構いません。予防医療に関するご相談は、どうぞお気軽に当院までお問い合わせください。

参考文献

  1. 竹内和義(監修). 子犬と子猫の診療ガイド. 緑書房.
  2. 河南明孝, 土井大輔 (2008). 滋賀県下の犬におけるレプトスピラ抗体保有状況. 日本獣医師会雑誌, 61(8), 645-647.
  3. 国立感染症研究所. レプトスピラ症とは.
  4. Sykes JE, et al. (2023). Updated ACVIM consensus statement on leptospirosis in dogs. Journal of Veterinary Internal Medicine. DOI: 10.1111/jvim.16903
  5. 石田卓夫(総監修) . 犬の内科診療 Part 1. 緑書房.
  6. ゾエティス・ジャパン株式会社. バンガード® L4 添付文書 (2025年1月改訂).
  7. 藤田桂一(編著) . ジェネラリストのための犬と猫の歯科診療 スケーリング・抜歯の確かな技術を身につける. 緑書房.