滋賀県内におけるレプトスピラの感染状況について
以下は滋賀県内のレプトスピラワクチンを接種していない健康な犬での調査になります。
レプトスピラはいくつかの型があるのですが、10%以上の犬でレプトスピラの中のなにかにかかったことがあったようです。
レプトスピラワクチンを接種していない健康犬での調査
(滋賀県下の犬におけるレプトスピラ 抗体保有状況 J.JPn. Vet. Med. Assoc., 61, 645 -647 (2008)より引用、一部改変してグラフを作成)
抗体検査で陽性:体内に特定の抗体が存在する状態を指し、一般的には過去にそのウイルスや細菌に感染したことがある、または予防接種を受けたことがあることを示します
感染:ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入し増えること
発症:病気の症状が現れること
感染しても軽度であったか発症しなかったのだとは思われます。
しかし、このデータは意外とレプトスピラ感染症が身近な存在であることを示しています。
外部の検査会社に検査を出しておらずレプトスピラ感染症だと診断されていないだけで肝炎や腎障害を引き起こしていたものもある程度いたと考えられます。
レプトスピラワクチンについて
レプトスピラの型は何百種もあります。
その中でワクチンになっているのはごく少数でしかありません。
一般的に接種されているzoetis社のバンガード5/CVーL4にも4種しか含まれていません。
それでも抗体陽性率が最も高かったicterohaemorrhagiaeは含まれているため、屋外を散歩するワンちゃんでは接種をしておいた方がいいと考えています。


レプトスピラ症とは
レプトスピラ症は、病原性スピロヘータであるレプトスピラ (Leptospira) の感染に起因する細菌性疾患であり、犬において急性かつ重篤な経過を辿る可能性がある重要な人獣共通感染症です。
病因と感染経路
本疾患の病原体はレプトスピラ属菌であり、感染した保菌動物(主にげっ歯類)の尿中に排出され、水や土壌環境を汚染します。犬への感染は、主に以下の経路で成立します。
- 経皮感染: 汚染された水系(河川、湖沼、水たまり等)や湿潤土壌との接触により、皮膚の微細な創傷や粘膜(結膜、鼻腔粘膜、口腔粘膜)を介して菌が体内に侵入します。
- 経口感染: 汚染された水を飲用することや、汚染物を経口摂取することで感染が成立します。
感染後、菌は血流を介して全身に播種され、特に腎臓や肝臓に定着・増殖し、重篤な臓器障害を引き起こします。
主要な臨床症状
レプトスピラ症の臨床症状は非特異的なものから、極めて重篤なものまで多岐にわたります。
初期症状
感染初期には、以下のような全身性の非特異的症状が認められることが多く、他の疾患との鑑別が重要となります。
- 発熱
- 元気消失、嗜眠(しみん)
- 食欲不振
- 筋肉痛(運動を嫌がる、触診時の疼痛)
- 嘔吐、下痢
重症化した場合の特異的症状
病態が進行し、腎臓および肝臓に障害が及ぶと、より特徴的な症状が発現します。
- 急性腎不全: 乏尿・無尿、あるいは多飲多尿。尿毒症による嘔吐や食欲廃絶が顕著となります。
- 肝機能障害: 肝細胞の壊死に伴い、黄疸(眼球結膜、口腔粘膜、皮膚の黄染)が認められます。
- 出血傾向(ワイル病様症状): 血管内皮障害により、点状出血、鼻出血、血尿、メレナ(黒色タール状便)などの出血症状が見られます。
- 肺障害: 肺胞出血(Leptospiral Pulmonary Hemorrhage Syndrome: LPHS)を併発した場合、咳や呼吸困難を呈し、予後は極めて不良です。
これらの重篤な症状は急速に進行し、播種性血管内凝固(DIC)や多臓器不全へと至り、死に至るケースも少なくありません。
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