犬の糖尿病とは?

🐾 犬の糖尿病とは?

糖尿病(Diabetes Mellitus:DM)は「インスリンの働きが不足する」ことで起こる病気

糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの量が不足したり、効きが悪くなったりすることで、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が慢性的に高くなってしまう病気です。人間と同様に、犬でも発症します。

犬では主に「インスリン依存性糖尿病(IDDM)」が多く、これはインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊され、体内でインスリンを作る力が失われてしまうタイプです。そのため、治療にはインスリン注射が必要です【1】【2】。

発症しやすい犬種と年齢

糖尿病は中高齢犬に多く見られ、特に7〜10歳前後での発症が多いと報告されています。また、以下の犬種で好発する傾向が見られます【1】:

  • ミニチュア・シュナウザー
  • トイ・プードル
  • サモエド
  • ビション・フリーゼ
  • スピッツ
  • フォックス・テリア

逆に、ゴールデン・レトリバー、コリー、ラブラドールなどでは発症率が低い傾向にあります(Breed risk: odds ratio 0.18~0.49)【1】。

病気の背景にある原因

糖尿病の原因には以下のようなものが関与します:

  • 自己免疫による膵β細胞の破壊
  • 慢性膵炎などによる膵臓障害
  • ホルモンの影響(例:黄体期のプロゲステロン過剰)
  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
  • 肥満や加齢

また、肥満や慢性炎症、内分泌疾患などが「インスリン抵抗性(効きにくさ)」を引き起こすことで、糖尿病の発症リスクが高まることがあります。

🐶 こんな症状があれば要注意

糖尿病の主な症状

犬の糖尿病では、次のような症状が見られることがあります:

  • 多飲多尿(PU/PD):体が脱水状態に近くなるため、水分を多く摂取し、頻繁に排尿します。多飲多尿についてはこちらのページで詳しく解説しています。
  • 多食(ポリファジア):インスリンの不足により、体はエネルギー不足を感じ、食欲が増すことがあります。
  • 体重減少:食べていても体重が減少することが特徴です。
  • 毛の状態の悪化:毛艶が悪くなったり、毛が抜けやすくなったりすることがあります。

病気が進行してくると

糖尿病が進行すると、以下の症状も現れることがあります:

  • 筋力低下、足腰のふらつき
  • 呼吸が浅く早い(パンティング)
  • 糖尿病性白内障:目のレンズに濁りが現れ、視力障害が生じます【3】
  • インスリン抵抗性が進むことで、皮膚の感染症や尿路感染症が反復する
  • 糖尿病性神経障害:歩行障害や力の入らない症状が現れることがあります【4】

進行してからの治療が重要

糖尿病は早期に発見して治療を始めることが非常に重要です。進行した場合、合併症が増えることで治療が難しくなるため、早期治療がカギを握ります。

🔍 糖尿病の診断方法

STEP 1:血液検査

血液検査は、糖尿病の診断において最も基本的な検査です。糖尿病の診断に役立つ検査項目は以下の通りです:

  • 血糖値(BG):糖尿病では血糖値が高くなります。通常、200 mg/dLを超えることが多いです。
  • フルクトサミン:過去2週間の血糖コントロールの指標となります。正常範囲を外れている場合は糖尿病の可能性があります【5】。

STEP 2:尿検査

尿中のグルコースの存在も診断に役立ちます。糖尿病が進行している場合、尿中にグルコースが現れることが多いです。

  • 尿比重(USG):糖尿病では、尿の比重が低下することが一般的です。
  • 尿中グルコース:高血糖が続くと尿中にグルコースが漏れ出します【6】。

STEP 3:血液ガス分析とクレアチニン

  • 血液ガス分析:糖尿病が進行し、ケトアシドーシス(DKA)を引き起こすと、血液の酸性度が上昇します【7】。
  • クレアチニン値:糖尿病に伴う腎機能障害が進行すると、クレアチニン値の上昇が見られることがあります【6】。

STEP 4:画像診断(必要に応じて)

糖尿病が進行していると、合併症(糖尿病性白内障や糖尿病性神経障害など)を確認するために画像診断が行われることもあります。特に糖尿病性白内障では、眼科的な評価が重要です。

💊 糖尿病の治療方法

糖尿病は治療によってコントロール可能な病気です。治療にはインスリン療法が中心となり、生活習慣の改善が欠かせません。

1. インスリン療法

インスリン療法は、糖尿病の治療において最も重要な方法です。インスリンは、糖尿病によって不足したインスリンを補うために使用されます。

2. 食事療法

糖尿病管理に最適な食事指導を行い、食事の回数や量、栄養バランスを整えます。特別療法食やサプリメントの提案も行っています。

3. 定期的なモニタリング

血糖値の測定、フルクトサミン検査、BGC(血糖曲線)を通じて、定期的なモニタリングを実施します。

🏥 当院でできること

当院では、糖尿病の診断から治療、定期的なモニタリング、合併症の予防まで、包括的なサポートを提供しています。

  • 糖尿病の診断とインスリン治療
  • 定期的な血糖値モニタリングと再評価
  • 食事療法と運動指導
  • 低血糖時の対応方法と管理
  • 白内障やその他の糖尿病関連疾患の管理
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