犬の外耳炎
犬の外耳炎は日常でよくみる病気の一つです。
外耳炎の原因になるものはさまざまです。
例えばアレルギーやホルモン疾患、真菌やウイルス、細菌などの感染症、異物や外傷、犬種に特異的なものなどなどです。
そういった外耳炎のもとになる病気・状態が治すことができるものであれば治療していくのが重要です。
一方で外耳炎治療そのものをみたときに大事なことは「耳の洗浄」と「耳の炎症抑制」です。
外耳炎では健康な耳より耳垢(フケ、アブラ、汗)が多くなります。
これらが蓄積すると耳(外耳道)の中の湿度が上昇し、抗菌作用が低下します。
さらに耳垢自体が炎症を引き起こす(炎症性サイトカインの産生を増加させる)ため、適切な耳の洗浄が必要になります。
耳の洗浄の効果
先ほども書いたように耳垢自体が炎症を引き起こすため、物理的の耳垢を洗い流すことは外耳炎の治療において有効です。
過去の報告で耳の洗浄により外耳炎の症状の改善が見られたということが報告されています。
耳の洗浄により耳垢が除去されるとお薬が直接耳に付着しやすくなるため、効果がでやすくなります。
耳の洗浄液について
よく使用される耳の洗浄液
・生理食塩水
・0.05%クロルヘキシジン
・市販洗浄液
当院では耳垢を溶かす作用のある成分を含んでいるエピオティック(株ビルバックジャパン)を市販洗浄液として使用しています。
重症度に応じて使い分けたり、市販洗浄液に対して過敏に反応してしまう場合は他のものを使用したりしています。
洗浄液の温度
洗浄液が冷たいと不快感が増します。
また、洗浄液の温度が上がることで洗浄効果も高まると考えられるため、犬の体温に近い温度(約38度)に温めた洗浄液を使用しています。
そうすることで洗浄時の違和感を軽減し、洗浄効果を高めることが期待できます。
耳垢除去剤
耳垢除去剤を点耳して、10−15分程度放置すると耳垢が溶解してきます。
耳垢除去剤を事前に使用することで過剰な耳垢を徹底的に取り除く補助になります。また、洗浄液による洗浄回数が減るため、外耳道への刺激も軽減できます。
耳垢除去剤を点耳して、耳垢と耳垢除去剤が混ざり合うように優しくマッサージし、少なくとも10分以上放置します。
耳の洗浄の流れ
必要であれば前述の通り、耳垢除去剤を点耳して、耳垢と耳垢除去剤が混ざり合うように優しくマッサージし、少なくとも10分以上放置します。
その後、洗浄液で耳の洗浄をしていきます。
耳からあふれるかどうかくらいの量の洗浄液を注入し、外耳道をマッサージするように洗浄を行います。
直接注入した洗浄液による耳の洗浄で耳垢を除去しきれない場合はチューブを適切な長さに切って、汚れた部位を丁寧に洗浄します。
これで耳垢は効率よく除去できますが、耳垢除去剤と市販洗浄液が外耳炎の耳の刺激になる可能性もあるため、0.05%クロルヘキシジンまたは生理食塩水にて最後に洗浄しています。
必要に応じて点耳薬を入れて終了です。
耳毛抜きについて
耳の中から毛が多量に生えているワンちゃんも時々います。
通常の耳の洗浄をしても毛に耳垢がからみつき、汚れが取れない場合も多いです。
その場合は耳毛抜きにて対応します。
生涯にわたる治療が必要な場合
生涯にわたる治療が必要な症例の多くはアトピー性皮膚炎の一つの症状として外耳炎がある場合や脂漏体質の動物の慢性外耳炎や耳垢過多があります。
アトピー性皮膚炎の55%で外耳炎が発症しているといわれています。
また、アトピー性皮膚炎のうちの3%は外耳炎のみの症状しか示さないそうです。
単発の耳の対処ではなく長期目線でアトピー性皮膚炎も含めて管理することが需要です。
おわりに
外耳炎の治療管理は難しいです。
耳の中は非常に狭い環境で、いかに効率よく耳垢を除去し、いかに早く耳を健康な構造や機能に戻すかが重要になってきます。
外耳炎を繰り返し起こってしまう場合は今の時点で外耳炎になっていなくても、来院時に耳洗浄を行うことも可能です。(目安は月1回程度)